なぜ
新型コロナは暴力を増幅させるのか
新型コロナウイルスは、私たちの生活に、様々な影響を及ぼして
います。その中で懸念の声が上がっているのが、暴力です(※1)。
実際にアメリカ、イギリス、フランス、南アフリカ等では、
暴力の増加が統計からも明らかになっています(※2)。
新型コロナウイルスが
暴力を増幅させるリスクを3つの視点から解説します。
☆1)特定の人間関係の中で過ごす時間が増える
感染予防により仕事を持っている方は職場勤務がテレワークに
代わったり、勤務日数が減ることにより以前よりも自宅での
滞在が増えています。
また子どもたちも、休校や保育所、学童の閉鎖により自宅で
生活しています。デイサービスやショートステイ等、高齢者や
障がい児者の施設も休業が相次いでいます。
夫婦・パートナーや、子ども、親等といった特定の人々との関係
が濃密となることは、価値観や考え方の違いに気づきやすい環境を
生み出します。そこで違いを認め合うことができれば信頼が
深まりますが、意見を受け入れない関係性においては、相手を
一方的に従わせることを目的とした暴力につながるリスクが
あります。
☆2)心理的不安のはけ口が自分より弱い立場に向かう
政府が緊急対策を打ち出しているように仕事の減少や休業・
廃業等に伴い、家計が急変している世帯は少なくありません。
外出自粛により生活のリズムが崩れたり趣味や楽しみを
控えている方、1人の時間を持てなくなった方もたくさん
います。
こうした現状に不満を感じたり、イライラするのは当然の
ことです。ストレスを自分自身で解消できればよいですが、
残念ながら、自分より弱い立場にある他者を攻撃することで
支配欲を満たし解決を図る人もいます。これが暴力につながる
リスクとなります。
☆3)社会全体が暴力に寛容になり見えづらくなる
新型コロナウイルス等の感染症、災害、戦争といった異常時は
生命の維持が最優先になります。このため通常であれば
ある意味、非常に暴力性の高い「行動制限を伴う指示命令」が
市民に広く受け入れられます。
報道は命を守る情報が中心になり、DVや虐待といった暴力を
含めた様々な事件が取り上げられにくくなります。
また、相談窓口の閉鎖や面談の休止(※3)は、暴力の存在自体を
潜在化します。
こうして暴力に寛容な風土が醸成され、見えづらくなることでリスクが増幅します。
暴力は人による行為です。だからこそ、私たち一人ひとりの力でなくすことができます。
こんな時だからこそ、暴力のない安心できる社会の実現に向け
知恵を出し合い、声を届けていきましょう。
※1 女性への暴力問題に関する国連特別報告者
「国家はCOVID-19に伴う家庭内暴力と闘わなければならない」
※2
*2020年4月1日付『毎日新聞』「新型コロナ 外出規制で
DV被害悪化の恐れ フランスでは通報3割増」
https://mainichi.jp/articles/20200401/k00/00m/040/347000c
*2020年4月2日付『テレ朝news』
「外出制限で犯罪は減少 家庭内暴力は増加 アメリカ」
*2020年4月7日付『NHK』「外出制限でDV増加懸念
国連機関が警鐘 新型コロナウイルス」
※3 全国女性シェルターネット「新型コロナウィルス
対策状況下における DV・児童虐待防止に関する要望書」
http://nwsnet.or.jp/statement/20200330.pdf